国会では憲法に関する話題で盛り上がっている。憲法の前文に書かれていることと今の政府が行おうとしていることとは違うのではないかと。機雷の掃海作業などは、戦争行為だろうとか、明日からでも戦争が起こるかのようである。もっとも、平和だと思われていたところで突然銃で殺されるのだから、あながち明日から戦争が起こるということも、絶対にないとも言い切れない。我が国は、70年前に戦争に負けた。負けたおかげで今の日本ができたともいえる。普通、負ければ領土もなくなれば国民もどういうことになるのかはわかったものではない。そういう恐怖ののちに今の日本国がある。多くの先人のおかげと感謝しなければならない。ただし、北方領土をはじめとして多くの領土や権益を失った。負けたのだから仕方がない。

戦争が終わる前、日本と言ったときには、朝鮮と台湾もそこに含まれていた。私が大学の医局に入った時、台湾と韓国から留学生が来ていた。彼らは、我々よりもいくつか年が上で、一人はすでにお子さんもいた。両名とも軍隊に2年ほど行ってからの日本だったのである。左様、日本だけ徴兵制がない。これは、日本にいる日本人にとっては当たり前のような気がしているが、戦前の日本ではこれがあったわけだし、台湾や韓国では今も行われている。そして、戦勝国であるアメリカでも絶えることなく続けられている。つまり、戦後の日本の70年だけが歴史上の例外ともいえるわけだ。我々は、その例外の世界に居ながら、その自覚が全くない。水や空気が普通にあるのと同じで、徴兵制度がないのが普通だと思っているのがいまの日本人であると言える。世界でもまれな存在である。

例年、各国で若者の意識調査というものが行われる。すると、日本の若者だけが他国と異なる数字が出る。しかし、これなども軍隊で建前をたたきこまれていない日本人にはこたえられないような質問だったのだろうと解釈する。

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