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3月10日は

2015/06/02

tokyo_attack_13月10日はと今問えば、9割以上の人が、「3.11の前の日でしょ」と答えるであろう。1000年後の歴史の教科書に載るとすれば、間違いなく3.11の方だ。3月10日の東京大空襲というものは、あまたあった空襲の一つでしかない。そういう意味でいえば、あの戦争が歴史の教科書に載ったとしても、その一部としてほとんど埋没してしまうことは確かだろう。70年前には当然私は生まれていない。私の母がいただけである。しかし、その母があの空襲の下で逃げ惑っていたのである。ところは深川である。一緒に逃げていたはずの祖父である父親ともはぐれて、一人で夜中の深川をさまよい歩いたという。とあるお寺の防空壕に入って、迫りくる火を、底にたまった水で何とか消して生き延びたのだという話はすでに何度も聞いた。まだ中学にも上がる前の子供がよくそれだけのことができたものだと感心する。女性は生まれたときから卵子を体の中に持っているという。少なくとも12歳ごろの女性はそうだ。だとすれば、私はただの卵胞であったかもしれないが、確かに私の母とともにその晩逃げ惑っていたのであって、私の体のどこかに、その晩の記憶が刻み込まれているかもしれない。

3月10日の空襲による死者は10万人を超えるという。空襲による被害としては史上最大であるという。南京で殺された中国人が30万人というが、白髪3千丈の国のその数が本当にそうだとしても、広島長崎とこの東京とを合わせればそれぐらいの数になる。片や人道に対する罪と言われ、一方では英雄といわれる人を生んだ。この違いが何かといわれれば、詰まるところ勝ったか負けたかである。だから戦争は勝たなければいけない。

今でも「あのお寺」に母親はいくそうである。多くの友人を亡くしたあの空襲を、けして許すことはない。

 

 

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