移転歯

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移転歯

2025/12/06

最近、facebook上に、矯正治療の装置などが載っている。

「?」というのも多いのだけれど、その中に、症例相談的なものが上がっていた。

患者さんからこんな写真が届きましたっていうもので、どうしましょうっていうことらしい。

右上側切歯の歯根が口蓋側から露出している。

この歯はまあ抜歯するしかないんだろうなあと思われるような症例である。

右上の第一小臼歯は抜歯してあるけれども、左は非抜歯である。

つまり、右側に限局した犬歯の唇側転移で、片側的に小臼歯を抜歯して、犬歯をその部分まで移動したところ、側切歯の歯根が露出したということだろう。

単純にこういう症例を見て、だから矯正治療なんてやるもんじゃないというGPの先生もいそうである。

外人さんのコメントには、スペースがない中で動かしたために、歯根が押しだされたんでしょうといったようなものばかり書かれていた。

友人にこれを見せたところ、初めはブラケットを上下付け間違えたんじゃないか、という。

しかし、ブラケットのトルクは、側切歯で10度程度。

プラスマイナスで20度程度で、それぐらいで歯根が露出するところまではいかないだろう。

じゃあ、なんでこんな悲惨なことが起こったのか。

おそらくこれは移転歯で、ここまで移動するのに、すでに3年ぐらいかかっているのではないかと思われる。

移転歯は、もともとの歯胚の位置が逆転しているもので、これを動かそうとしても、非常に動きにくい。

そして、仮に動かせたとしてもこのように歯根露出が生じる。

さらに、装置を外せば、あっという間に元の位置に戻ろうとするだろう。

おそらく、犬歯の歯根は、側切歯の歯根より近心にあり、側切歯の歯根はこれに押し出されるような格好で口蓋側に移動したものと思われる。

すでにこの側切歯は歯根が露出しているということで抜歯ということになるだろう。

翻って、こういう方の治療方針はどうすべきであったのか。

犬歯と側切歯の位置が変えられない以上、犬歯を抜くということになるだろう。

犬歯と小臼歯は形態が似ているが、側切歯と犬歯とでは全く異なるからだ。

移転歯かどうかの判断は難しい。

それは結局動かしてみて初めて分かるというたぐいのものだからだ。

実は私もそういう患者さんを経験したことがある。

なかなか動かず、「いつになったら終わるんですか」としばしばいわれた。

どこの矯正にもそういう患者さんの一人や二人はいそうである。

そして、そういう症例はこっそりと机の引き出しにしまわれているのだろう。