菜の花の沖
2017/09/13
高田屋嘉兵衛という、江戸後期の日本とロシアとの間に挟まれて両国間の外交問題を解決した人の話、ということになる。
貧しい漁村に生まれた嘉兵衛は、親類を頼って船乗りとなり、やがては一船の船長となり、高田屋という店を立ち上げ、蝦夷地での漁業改革に取り組む。そんな中、ゴローニン事件に巻き込まれてロシアに抑留され、両国間の交渉に携わることを余儀なくされる。
農業国である日本にあって、海運業につくものは当時としてはまだまだ少なかったのではないかと思われる。そういった中で英雄的な仕事を通じて店を発展させ、アイヌ人の生活向上に取り組んだ彼の働きは、痛快である。
小説の中にはじめから最後まで貫かれているのは、江戸時代という社会の閉塞性であり、司馬遼太郎が書きたかったのはそこではないのかと感じる。生まれ故郷の青年組織である「若衆」という組織はすべての若者が所属しなければならないものだが、きわめて窮屈な組織であることが描かれている。全ての人がそのような閉塞的な地元社会に縛られていたということだ。
また、海運業を行うものにとって、船というものは技術の進歩が求められるものであるはずだが、幕府によって大きな船の建造は禁止されていた。当然、進歩的な船の建造もできないことになる。技術革新を全てストップしていたのである。すべては徳川家存続の為である。
われわれは、江戸時代といえば、自由闊達に人々は生きていたように思っているが、現在のわれわれが想像できないほど窮屈で閉塞感のある社会であったようである。もっとも、これは現代でも何かの形では残っているものでもあろう。
嘉兵衛という人は、この閉塞感を打ち破って一代で成功した人と描かれる。だからこそ痛快なのであろう。しかし、彼の死後店はつぶされる。結局、江戸時代というものにつぶされたということになるのだろう。
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