神経を取ると歯の強さは16分の1になる
2019/12/11
神経を取った歯は枯れ木のようで、ちょっとの力でぽきっと折れるといわれる。
そのため、歯の神経を取るということは極力避けたいものである。
かつて、医局の後輩が抜髄されるとき、涙が出たと述べている。
歯の命を奪うと考えれば、むべなるかなである。
一方、便宜抜髄という言葉がある。
ブリッジの支台にする際に、抜髄することを言う。
同様に、前歯部をクラウンにする際にも便宜抜髄を行う。
「歯並びが悪い」という場合に、全部削ってまっすぐなクラウンに代えるという治療である。
まったく問題のない歯の歯冠部分を切り落として、あえて「合わない」クラウンを入れることになる。
合わないものが入っているのであるから、当然歯周病になりやすいうえ、神経を取っているため、歯自体がもろくなっていて折れる危険性もある。
さらには、根管治療の成功率が50%といわれていることからすれば、再び根っこの治療をやり直すことはおろか、抜歯せざるを得なくなることもあるだろう。
これほどリスクが高い治療をどうして行うのか。
おそらく、「神経を取ってもそれほど問題はないですよ」という説明がなされているからであろう。
神経を取った歯の強さは16分の1であるという話もある。
根管治療の成功率が50%ということは、少なくとも半分はいつかはやり直す必要が出てくるということである。
矯正装置をつける2年程度の時間と不便さを忌避するために、自ら歯にダメージを与えるということは果たしてどうなのだろう。
「将来歯を抜くことになるかもしれませんよ」という説明であったとすれば、果たしてどれぐらいの人がこの治療を選択するだろうか。