歯根吸収
2020/07/26
知人から相談を受けた。
別の先生が矯正治療をしている患者さんのことである。
動揺があるのでレントゲンを撮ったところ、上顎中切歯の歯根が半分以下になっているという。
矯正治療を行うと歯根が吸収する。
これは、歯が動く過程で骨を壊すメカニズムと同じ作用が歯根にも働くからだと考えられる。
矯正治療後のレントゲンでは、根尖が丸まっているのをよく見る。
ただし、それで極端に歯根が短くなるということは通常はない。
だが、極めてまれに極端に歯根吸収を起こす患者さんがいらっしゃる。
歯根吸収の発生には、力の大きさ、方向、時間が関与するといわれる。
だが、何ら矯正力を加えていない観察中の方でもこのような吸収が見られることがある。
つまり、これが矯正治療によるものであるのかどうかもはっきりしない部分はある。
また、歯根が3分の1,4分の1になっても、矯正治療が終了して保定に入ると動揺がなくなりしっかりしてくる。
それは、ほとんど歯槽骨が吸収してしまった歯周病の患者さんの歯でも、歯磨きをしっかりすれば動揺がなくなってくるのと同じである。
さらに、このような歯でも時間とともに根尖が閉鎖する。
それは歯が生きているということであり、また歯として機能するということでもある。
このような吸収を見るのは、10代の方ばかりのようにも感じる。
歯根の形成に問題のある歯なのかもしれない。
もちろん、歯根が短いことに変わりはないので、強い力が加わったり歯周病で歯槽骨が吸収されれば普通の歯よりは脱落の危険性は高いだろう。
だが、歯磨きをしっかり行い、無理な力を加えなければ十分に長持ちするのである。
確率からいえば、このような症状が現れるのは数百人に一人ぐらいのものであろうと思う。
治療を開始するときにはもちろんわからない。
では、仮に分かっていたらやらないのかどうか。
その時は治療計画の変更などを考える必要はあるだろう。
できれば、このような歯には当たりたくないものである。