STロック
2020/09/18
リンガルアーチやナンスのホールディングアーチといった口腔内に固定する装置に、アタッチメントをつけることがある。
その一つがSTロックと呼ばれるもので、これによりバンドの着脱をせずに装置を取り外すことができる。
前歯部反対咬合を改善するためのリンガルアーチのようなものであれば、直接歯に力を加える弾線をアクティベートする必要がある。
その際に、一々バンドを外して行うのでは手間がかかる。
アタッチメント部分で着脱できた方が効率が良いうえ、患者さんの負担も小さい。
昭和大学では昔からこのSTロックというものを用いてきたし、おそらくそれは今も同様だろう。
もっとも、それは術者サイドのことであって、必ずしも患者さんにとって快適とは限らない。
後輩がこれを試しに口腔内に装着してみたところ、「地獄の苦しみだった」という。
舌に当たっていたいのだそうだ。
我々は、患者さんにそのような苦痛を強要することがある。
そして、それが実際にはどれほど苦痛なのかを知らないということが多い。
後輩の言葉は、それを教えてくれるとても貴重なものであると感じるものである。