「ノモンハンの夏」が終わる
2021/01/12
「日本の一番長い日」や「ノモンハンの夏」を書いた半藤一利が90歳で亡くなったそうだ。
かつて、「ノモンハンの夏」を読んで、ずいぶん衝撃を受けたものである。
「ノモンハンの夏」は読み物としてはとても面白いが、内容としてはかなり事実誤認がある。
ノモンハン事件というものの評価がかなりこの小説によって作られているところがある。
それがソ連崩壊で実はだいぶ話が違うということが明らかになってきた。
そうなると、よく書けた小説というものはむしろ悪である。
辻政信や服部卓四郎は自らの保身栄誉のために、しないでもいい戦争を起こし、いたずらに兵を殺したと書かれている。
だが、それなら戦後自衛隊発足の時に服部が呼ばれるということが不思議である。
1990年代に出版された本の最後には、ソ連側の資料の一部が載っている。
そこには、日本軍に匹敵する死者数が書かれている。
にもかかわらず自らの認識不足を最後まで書き直さなかったのなら、せっかくの名著が残念なものになってしまった。
冥福をお祈りしたい。