平気でうそをつく歯医者

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平気でうそをつく歯医者

2024/06/16

私が矯正科医になったころ、親類の方からこんなことを聞いた。

「うちの子供が受け口で、このままだと顔が三日月のようになる」といわれた。

彼女は、危うく難を逃れたといった感じで話してくれた。

一言で「受け口」といったとき、その原因は大きく分ければ二つになる。

それは、「骨格性」か「歯性」かということだ。

下顎骨の成長が優位(上顎骨の成長が劣後)である場合が「骨格性」の受け口であり、これは、多少の治療で変わるものではない。

特に、下顎骨の成長が過大であった場合に、「三日月のような顔」になると考えるべきであろう。

それを、すべて「受け口」が三日月のような顔になるという言い方は、誤りというより嘘である。

さらに言えば、下顎骨の過成長が「三日月のような顔になる」ほどのものであるなら、多少の矯正治療で止められるものではない。

親類のお子さんは、切歯斜面版のようなものを用いたという話までは伺ったが、その後は拝見していないので消息は不明だ。

少なくとも、その程度のもので治るのであるなら、それはまさに「歯性」の受け口であり、三日月のような顔にはならなかったであろう。

実は最近、再び「三日月のような顔」話を聞いた。

出っ歯を主訴として来院された方である。

出っ歯で口元が出ているので引っ込めたいというこの方の治療は、通常は上顎小臼歯の抜歯である。

フルブラケット治療をするのがスタンダードな治療と考えられる。

ところが、以前に相談に行った先生の話である。

「ワイヤー治療をすると、顎が出てきて三日月のような顔になる」

「だから、インビザラインにしましょう」

確かに、上下の小臼歯を抜歯して治療すれば、口元が下がることにより、鼻と頤部分は相対的に目立つようになる。

しかし、「三日月のよう」な顎にはなりえない。

あくまで、下顎骨は形にしろ大きさにしろ今と同じものである。

それをあたかもその治療で顎変形症が起こるかのように説明する。

これは嘘であり、だまして金儲けをしたいということである。

40年近く前の手法で金もうけをする歯医者が今でもいるということにも驚く。

そして、それが先日の詐欺と同じようにインビザラインと結びついているというところに、昨今の歯医界の危うさを感じるのである。