学校検診で不正咬合の項目はなくしてくれないか
2024/08/10
夏休みに入り、学校検診の紙をお持ちになる方がいらっしゃる。
学校検診の結果を受け取るのが4月の終わりから5月にかけてであるから、何か月かは放っておくということであろう。
虫歯と違って、慌てて受診する必要がないからでもある。
矯正科を受診される方は、当然だが「不正咬合」とか「歯並び」という項目である。
わたしが子供のころに、こんな項目にチェックが入ることはまずなかった。
それが、今や虫歯の激減により、不正咬合のチェックが増えている。
上下顎とも側切歯が捻転していたり、舌側に萌出するということはよく見ることである。
問題はそこからだ。
側切歯が舌側に転位している場合、それをすぐに直す必要があるかということである。
ほとんどの場合、こういった側切歯は時間とともに歯列弓に復帰してくるものである。
これは、舌と口唇の力によると考えられている。
一方、そうならないような場合、将来的に抜歯が必要なほどの空隙不足になる可能性がある。
そうであるなら、前歯部が生えてきたところで何らかの治療をすることは無駄を通り越してやらない方がましである。
しかし、実際にはこういう患者さんがどこかの歯医者に行けば、何らかの「治療」を提案されることが多いだろう。
そして「専門家」から今すぐ治療をした方がいいといわれれば、盲信する方も多いだろう。
もちろん、それで問題なく永久歯列が萌出するということはある。
ただし、これはやってもやらなくてもそうなった可能性が高い。
逆に、やったにもかかわらず一向に治らないケースも出てこよう。
当初の診断が間違っているあるいはそもそも診断そのものがなく治療しているのだから当然といえる。
というようなことを考えると、学校検診によって歯医者に行くということが良好な結果にならないという可能性が高いということである。
せっかく来た患者さんを何もせずに帰してはいけないという人はいる。
そういう人がいる以上、学校検診の「不正咬合」はない方がいいのである。