夕刊に雨月物語のことが載っていた。高校のころ、古典の授業で読んだ覚えがある。江戸時代の作品なので、いわゆる古典とも少し異なる。擬古文という風に教わった。なるほど、源氏物語などと比べると、文章が平易なような気がする。

その中にある｢菊花の契｣は英文に訳されたものがあって、武士の約束は命よりも大切だということを述べているものだと信じてきた。さすがにサムライというものはえらいものだと。

夕刊の説明の中に、これは恋愛小説だと書かれていて、思わず｢？｣であった。普通に読んでいて、どこにも恋愛感情を感じさせるような記載は無い。単に何日か逗留して、義兄弟の契りを交わしたと出ているが、ただそれだけである。確かに、義兄弟というものが私の考えていたようなものであるのなら、わざわざ腹を切る必要までは無いはずだし、そんなに重い約束などするだろうかという疑問はあった。いや、疑問すら感じたことはなかった。

義兄弟の契りというのは、衆道だといわれ、最後にダメ押しで、｢菊花｣が出てきて始めて納得した。だから9月9日でなければならなかったのだ。もしもこれが3月3日だったり5月5日だったとしたら、なんだかわけの分からないものになっていただろう。いや、9月9日でもほとんどの現代人はわけが分かっていない。

いわれて気がつく。うかつだったな。またひとつ利口になった気がした。

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