金属修復は体に悪いのか
2020/10/23
最近、歯の金属修復による体への害という話を聞くような気がする。
虫歯治療で入れた金属修復物を除去したら体調がよくなったというものである。
実際、ドイツでは妊婦へのパラジウムの使用は避けるべきという勧告が出されているという。
私がこのような治療を実際に行うわけではないので、本当のところがどうなのか全く知らない。
ただ、少なくとも私の知る限りで虫歯治療によって体の調子が悪くなったという人を聞いたことがない。
あるということは認めるが、極めてまれな症例なのではないかという気はする。
それとは別に、海外で歯科治療に金属を用いるということはほとんどないといわれる。
アメリカなどでは、「日本で治療をすると金属を入れられちゃうよ」という反宣伝もするようだ。
金属による虫歯治療は見た目が悪い割に高価である。
通常インレーやクラウンに用いられる金属は、金銀パラジウム合金というものである。
プラチナの代わりに自動車の触媒に用いられるパラジウムは、この10年ほど価格が暴騰していて、なんと金よりも高い。
さらに、金価格も右肩上がりの上昇をしており、昔の何倍かになっている。
その割に保険点数があがっていないそうで、これを用いることは収入の減少につながる。
一方、レジン充填は白くて安く、印象を採る手間もなく充填できる。
保険治療で金パラを使うこと自体限界なのかもしれない。
ただ、この「金属は体に悪い」説にはいかにも胡散臭さが付きまとう。
金属が体に悪いということになれば、すなわち金属をすべてレジンやセラミックに置き換えろということになる。
もし、これをやり始めれば、それは膨大な数になり、歯医者の仕事は一気に何十倍にもなるだろう。
10年ほど前になるが、東京スカイツリーができる前のことである。
「東京タワーより強力な電波を出すため、口の中の金属に反応して体に障害を発生する」という話があった。
特に、東京タワーとスカイツリーの間が危ないといわれた。
月島はもろのその地域であるが何事も起こらなかった。
口の中の金属=健康被害 という恐怖心で歯科需要を高めようという意図があったように思える。
本当のところはどうなのだかわからない。
ただ、金属による修復治療は、減少することは間違いないのだろう。