お歳暮の石鹸はどこに行ったか
2021/11/07
実家も古くなって、築50年以上になる。
そうなってくると、なんだかいろんな匂いが染みついているようで、いいような悪いような複雑なものだ。
この間、物置を捜索していてその一端にたどり着いた。
石鹸が積まれていたのである。
そして、その石鹸こそ我が家に染み付いた匂いの一つであった。
昔はお中元やお歳暮の定番は石鹸であった。
もう少し安いところではタオルというのもあって、「OO工業」とか「XX酒店」なんて書いたものがいっぱいあったものだ。
ところが、最近では石鹸などというものを使わなくなった。
かわりにボディーソープなどという代物が幅を利かせていて、それは我が家でも同様であるらしい。
こうなってくると、せっけんなどというものはもらってもただ積まれているだけの厄介者に転落してしまう。
食べ物と違って腐るわけではないが、油脂を用いているため、これが酸化して匂いや色が変わってくるようだ。
そして、その酸化した油脂の匂いというのが、実家に染み付いたと思ったあの匂いだったようだ。
今、その石鹸を使っている。
もちろん、「あの匂い」もする。
また、酸化しているだけに、泡立ちもよくない。
まだあけていない多くの箱の中身が、果たして石鹸として機能するのかどうかも不明だ。
さらには、酸化して、体に悪い影響を与えるなんてことはないだろうかと思いながら体を洗っている。
かなりの箱が積みあがっているところからすれば、すべてを使い切るには5年や10年はかかりそうである。
それだけの年月、私は「あの匂い」を身にまとい続けることになるようである。