祖母の実家が新潟の私は、子供のころからよく新潟に遊びに行かせてもらった。何といってもカニが大好きなのだが甘エビやイカもおいしい。とにかく何を食べてもおいしいと感じるのが田舎のいいところである。そのころはそれでもあまり感じないというのも子供の悪いところだ。だが、確かに私は子供のころに新潟の枝豆を食べたのである。

新潟というところは、枝豆の消費が日本一なのだそうだ。あんなものと言っては何だが、どこにでもあるような食材にしか思えない。でも、新潟は日本一の生産県でもありまた消費県でもあるのだ。その新潟で枝豆をいただいた私は、当然枝豆が大好きである。

ところが、今や居酒屋に出てくる食材のかなりのものは海外からやってくる冷凍もので、焼き鳥などは東南アジアが多い。このあいだまで新聞に連載していたＣＰなんかが出荷元かもしれない。なにしろ、現地で加工までやって冷凍して送ってくる。お店のほうではそれをチンすればいいだけである。

焼き鳥なら冷凍してもある程度の味にはなる。ところが枝豆はそういうわけには行かない。腰も味も無いものに成り下がってしまう。東京で食べる枝豆というものはそういうものだったから、大学に入って以降は食べなくなった。また食べるようになったのは結婚して自分でゆでるようになってからである。そして気がついた。枝豆がまずいのではなくて、お店のがまずいのだと。

最後に枝豆がうまいと思ったのは浦安の焼鳥屋であったか。目の前でゆであがった豆を団扇で冷ましていた。まさかゆであがって豆を水にさらすような人はいないと思うが、こういう風に作っているところをみると、この店は大したものだと感じるものである。一方、どう考えても冷凍と思うような代物しか出さない店は、すべての食材があやしく感じられる。

ちゃんと作れば当然高い。でも、そういうものを出す店は信用が置ける。多分何を食べてもしっかりと作っているに違いないと思われる。なかなか枝豆のおいしいお店というものがないように思うのだが、ということは全うな居酒屋というのはほとんど無いってことかな。

 

 

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